日本大学芸術学部映画学科

映表理の授業〈映画ビジネスⅢ〉では、すでの多くの学生がインターンシップを行っています。先日、終了した学生からインターンシップレポートが提出されました。

2016年度の第1弾となります。
出向した会社は、映画配給会社「ビターズエンド」です。

インターンシップ報告    

中島 彰子

 私はビターズ・エンドにてインターンシップをさせていただきました。東京のミニシアターで映画を見るようになって、「ビターズ・エンド」というテロップをよく目にするようになりました。興味深い作品を手がけている会社だと感じておりましたので、今回インターン先に希望いたしました。

 ビターズ・エンドは映画の配給・宣伝・製作を行なっている会社です。社員さんは10人くらいの小さな会社ですが、ジャ・ジャンクーやダルデンヌ兄弟、ホン・サンスといった国際的に活躍する監督の作品や、個性的かつ素晴らしい作品をコンスタントに配給し続けています。以前に見た大好きな映画のパンフレットや資料などが所狭しと積まれているオフィスに、ミーハーながら心が躍りました。

 今回インターンに行かせていただいている間も、『最愛の子』、『シェル・コレクター』、『マジカル・ガール』、『山河ノスタルジア』、『裸足の季節』などの話題作を同時に抱えていらして、忙しくも活気のある仕事場に刺激を受けました。特に『裸足の季節』は、監督と主演女優たちの来日キャンペーンもあり、様々なイベントに社内全体で取り組まれていたのが印象に残っています。窓口に持っていくと鑑賞料金が割引になる缶バッチの無料配布や、パンやケーキ屋、靴下屋やネイルサロンとのコラボレーションなどいろいろなアイディアが次々と生み出されていきました。作品の特徴、舞台背景、監督やキャスト、雰囲気、ターゲット……それぞれの映画によってアプローチも異なります。

 私は主に営業のお手伝いをさせていただきました。毎回行なったのはパンフレット、DVDなどの販売物やポスター、チラシ、プレスシートなどの宣伝物を各上映館や関係者に送る梱包・発送作業です。試写状やサンプルDVDなどは想像していた以上に多くのライターや媒体、著名人に送っていることがわかりました。他にも雑誌、新聞に載ったパブリシティの整理や劇場に飾るパネル作り、上映館付近のカフェや書店にチラシを置かせてもらうよう頼みに回るなど、様々な作業をやらせていただきましたが、映画の配給・宣伝とは実に多種多様な仕事があるのだと驚きました。

 昨年の映画ビジネスⅠ・Ⅱの授業で、映画が劇場で上映されるまでの大まかな流れは教わりましたが、実際の現場で見聞きすることで新たに知ることも多かったです。ティザーチラシ、本チラシ、コメントチラシの3種類があって、段階によって使い分けていること(本チラシも東京用と地方用がある)や、単館系の映画は東京でしかほとんど見られないものだと思い込んでいましたが、東京での上映が終わると順々に各地方へと巡演されていることなどを知りました。人気作のパンフレットは上映館からの追加発注や増刷されることもありましたが、逆に映画自体は素晴らしいのにパンフレットが売れにくい作品などもありました。

 宣伝活動には華やかな印象がありましたが、地道に電話をかけたり足を使ったり、ツイッターやフェイスブックといったSNSにおける細かい宣伝なども大事であり、決められた予算と期間の中でいかに工夫できるか、社内の皆様が真剣に考えられているのが伝わってきました。

 映画作品がたくさんのスタッフによって製作されるように、その配給や宣伝もたくさんの人の手によってなされるものなのだと実感しました。知識や経験も勿論必要なのでしょうが、何よりも人と人との関わりが非常に重要な仕事なのだと学びました。不慣れで至らない点も多々あり、社内の方々にはご迷惑をおかけしたことと思いますが、とても温かく接していただき、数々の貴重な体験をさせていただきました。本当にありがとうございました。

2016/07/15

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