日本大学芸術学部映画学科

「日藝のオンライン・オープンキャンパス」関連企画として、WEBで見ることの出来る映像表現・理論コースの過去の実習作品をご紹介しています。
今日の作品は、2017年度に3年次の実習「映像表現・理論Ⅲ」で制作されたアニメーション『浜宿海岸のうわさ』です。


2017年度 映像表現・理論Ⅲ
柿﨑真帆『浜宿海岸のうわさ』

作者コメント

①作品について
大学3年の頃に制作した切り紙のホラーアニメーションです。
アニメーションとは無から有を生むものですが、有を生むための動機が自分の内側にないと、虚空を前に四苦八苦してしまいます。そういう意味でアニメーションの造形はごまかしがききづらいです。意図した以上のものができあがってくることはあまりない気がするんです。だからこそ、最初から深いものを意図する必要があって、なおかつそれをどう視覚化するかを拘らなくてはいけないと思ったんです。
『浜宿海岸のうわさ』はその考えのもとで生まれました。物語には、邪悪だけれども切実な願いがあります。この切実さの前で一般的な倫理や法律は的外れでした。真理に対して、形式的な善悪は思い込みと同じなのだということを、夕焼けのオレンジで表現できないかと考えました。夕焼けは、人目を欺くためではなくて、なんらかの必然があってオレンジ色をしているはずなんです。こちらの思い込みで明るく見えてたものが急にひっくりかえっちゃう、そういう感覚を産むことができれば、愕然とするような気づきを与えることができるのかなと。
これを表現する上で、デジタルではダメだと思いました。ペタっとした綺麗なオレンジじゃなくて、鮮やかさとどす黒さが一緒になったオレンジでないと。アナログで絵を描いて、オレンジの色味がよりキツく出るように自前の撮影台を組んでみました。それでも私の配慮が足りず、直接的なオレンジになりすぎて、思うようにはいきませんでした。造形の問題だけではなく、必要なものや考えなくてはいけないもの、手放さなくてはいけない勘違いや思い込みが他にもたくさんあったのですね。それでもこのオレンジに対する執着を諦められなくて、結果として1年後の卒業制作にも繋がっていきました。この『浜宿海岸のうわさ』は、自分の方向性を明確にしてくれた、思い出深い作品です。
(映画祭入選歴:INTERNATIONAL STUDENTS CREATIVE AWARD 2018 国内映像コンテンツ部門・入選)

②卒業後について
アニメーションの業界に進むとはまったく思っていなかったのですが、紆余曲折をへて、現在では株式会社クロブルエに勤務しております。普段は資料周りの仕事が多いのですが、直近の仕事ですと、ドキュメンタリーの編集をすることもありました。
そして宣伝です!みなさん『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』をご覧になって頂ければ嬉しいです! 前作を劇場で見たころ私はまだ学生で、「未完成なのかなぁ」という感想を抱いていました。だからこそ今作では監督が本当にやりたかったことができたのかな?という気が勝手にしております。そういうのって大事ですよね。世界的な状況が続く中、今まさに苦境に立たされている学生さんがたくさんいらっしゃると思います。劇場に足を運びづらい状況下ではありますが、機会がありましたらぜひ、よろしくお願いいたします!


本作品が入選したISCA2018受賞作品のページはこちら

https://kc-i.jp/activity/award/isca/2018/winners/(外部サイト)


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2020/07/30

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