映表理の授業〈映画ビジネスⅢ〉では、春から受講生がインターンシップを行っています。インターンシップが終了した学生からレポートが提出されました。
2025年度の第1弾となります。
インターンシップで学生を受け入れていただいた会社は、「株式会社パンドラ」です。
インターンシップ報告書
本間 大翔
私は株式会社パンドラで3月末から7月までの間に20日間のインターシップに参加した。パンドラは映画の配給・宣伝のみならず、学校用の教材DVDの発送、自主上映の受付けなど幅広い分野の業務を行なっている。社員は代表の中野さん含め2名で、アルバイト2名と私を含めた5人での活動が多かった。映画の配給は代表を務める中野さんの意向から外国映画が多く、ロシアのアレクサンドル・ソクーロフ監督の作品や、セルゲイ・パラジャーノフ監督作品、韓国映画など様々である。
私がインターンシップ期間中に行なった業務は沢山あるが、まずは1日の業務の始まりとなる掃除である。出勤をし、挨拶をすると事務所の床の掃除機掛けから始める。ほこりやダンボールの紙屑が完全に綺麗になるように目を凝らしながら行なってゆく。掃除機をかけている間は窓を開けるため、暑く、汗が異常なまでに滴る。掃除機が終わるとトイレ掃除を行う。便器の裏や便器の中、隅々までマジックリンを使いながら綺麗にしていく。その後は水回りの掃除である。シンクのゴミを取り、タワシで汚れを落としてゆく。ここまで行い、初めて映画配給などの業務に入る。この掃除類は一見業務とは関係ないように思えるが、普段家であまり家事をやらない私にとっては人間力を養う大切な経験となった。社員の方の気持ちを考えながら綺麗にし、身の回りを清潔に保つという行為は毎日の業務をスムーズに、快く行うためのとても大事な要素であった。
基本的な映画配給の業務の中に発送作業がある。今後配給予定の作品のチラシの発送、団体や劇場から依頼を受けた宣材物の発送など、これらが一番多く行なった業務である。パンドラでの作業は機械に頼ることはほとんどなく、手作業で行う。チラシを学校やカフェ、チラシを置いて貰いたい場所に送る際には、何千枚とあるチラシを自分の手で20部ずつに分け、OPP袋に広告と一緒に同封し、印刷した宛名シールを貼って郵便シールも貼る。この作業を何度も繰り返し行い、その業務のみで1日が終わってしまうことも少なくなかった。チラシの発送の関連で、上映劇場が追加になった場合の業務がある。この場合、まずは本来の下白チラシと呼ばれる下の部分に余白があるチラシの余白部分に「アップリンク京都他、〜〜での上映追加」などと書かれた縦の長さ3ミリ程度のシールをピンセットを使用しながら貼っていく。途中からは目と腰が痛くなり、気が遠くなるような作業である。他にも宛名の印刷など基本的な配給の業務の中では雑務と呼ばれるものは多くあり、沢山経験した。雑務はほとんどが手作業なため、これらの業務を通して普段私たちの手元に当たり前のように届いている映画の情報が以下に簡単ではない多くの工程によって作り上げられているのかを感じることができた。元々映画を多くの人に届ける配給の仕事に興味のあった私にとってまたとない大切な経験となった。
他にも、印象に残る業務として私自身が「配給会社パンドラ」の一員として名を掲げ、責任が伴う業務は強く印象に残っている。まずはインターンシップを開始して2週間ほどで参加した映画『うしろから撮るな 俳優織本順吉の人生』の新宿K’s cinemaで行われた初日舞台挨拶の手伝いである。舞台挨拶の前日に急遽参加が決まった。パンドラで配給を行なっている作品の多くの舞台挨拶では、代表の中野さんか社員さんが司会を務める。今回の業務は登壇される監督と俳優さんの質疑応答中の写真を何枚か撮って欲しいとの依頼であった。後日私が撮った写真で良いものがあれば作品公式SNSに投稿をするとのお話であった。結果としては無事に実行することができたが、普段いるはずの客席の観客としてではなく、登壇者の方々と一緒にシアターに入り、関係者席に座る。そしてカメラを構えて写真を撮るという経験は緊張もしたが、かけがえのない体験となった。自分もこの映画を世の中に放つ一員であり、この作品が多くの人に届いて欲しいという純粋で今までは感じたことの無い感情を持つことができた。この舞台挨拶では抽選会や、急遽監督のサイン会が映画館のロビーで行われた。私はこの時、中野さんたちと一緒にスタッフとして立っていたが、映画を見に来ていた映画監督や、広告会社の方、K’s cinemaの支配人といった方々に中野さんが「インターンでパンドラに来ている本間くんです」と紹介をしてくれた。実際に映画業界で現在活躍されている方とお話をしたり、業務の流れを確認した時間は貴重なものである。
また、業務の多くは事務所での作業であるが、銀行で通帳の記帳や切手の買い出しといったようにお使いも多く行なった。その中でも印象に残っているのは、場所は記憶が曖昧なのだが、築地の東京国際映画祭の事務局にパネルを取りに行ったことである。ほとんど私服の大学生がオフィスビルに入っていくだけでも周りから見れば違和感があるかもしれないが、インターホンを押して「株式会社パンドラのインターンの本間です」と自己紹介したときはなんとも言えない感情になった。その後、担当の方とお話をし、無事に帰路に着いたが、改めて振り返ると社会の一員として接してもらえた嬉しさと、好きな映画に直接関われている感動で複雑な感情になっていたと思う。
『セルロイド・クローゼット』のトークイベントでの水上文さんのコメントの文字起こし作業、『原爆スパイ』や『わたしは異邦人』など公開予定の作品の試写用DVDの焼き写しなど、映画に関わるあらゆる業務を20日間で経験させていただいた。このインターンシップを通じて映画業界に触れて自分を見つめ直すという経験は、これからの将来必ずや自分のためになる日が来ると思う。最後の方は昼休憩の時間に、興味深い映画業界の話や、映画の話を楽しくさせていただいたことも強く印象に残る。お世話になったパンドラの皆様に改めて感謝申し上げます。
パンドラでインターンシップに取り組む様子
◆開催中、および開催間近の映表理関連のイベント等
映像表現・理論コース 教員有志によるTwitterアカウント
映像表現・理論コースのインターンシップレポート(まとめ)
2017年度、2018年度
2016年度
2014年度、2015年度
◆過去の映表理関連イベント等
2019年12月13日〜19日
映画祭「スポーツの光と影」
映表理の卒博ツイッターはこちら↓
映像表現・理論コース 卒博2018
2018年12月8日〜14日
映画祭「朝鮮半島と私たち」
2017年12月9日〜15日
映画祭「映画と天皇」
2017年12月開催
インターリンク:学生映像作品展(ISMIE)2017
2017年3月
2017年「映表理の卒博」のホームページ
2016年12月10日〜12月16日
「宗教映画祭」
2016年3月30日〜4月4日開催
映表理の学生による『映画「基礎」史展』
2016年3月開催
『日藝の卒博』映表理関連行事(まとめ)
2015年12月開催
「ニッポン・マイノリティ映画祭」
2015年10月開催
インターリンク学生映像作品展(ISMIE2015)
ISMIE2015の様子
2014年12月開催
映画祭「ワーカーズ2014」
2014年10月開催
インターリンク学生映像作品展(ISMIE2014)