日本大学芸術学部映画学科

2024年度インターンシップレポート第6弾です。今回、インターンシップで学生を受け入れていただいた企業は、セテラ・インターナショナルです。

インターンシップ報告書

溝手連

私がインターンに行っている間、セテラ・インターナショナルでは創立35周年記念作品としてフレデリック・ワイズマン監督の最新作『至福のレストラン/三つ星トロワグロ』を配給していた。世界的に巨匠であるワイズマン監督の作品に、このような形で関われることにとてもうれしく思った。主に文化村ル・シネマ渋谷宮下とシネスイッチ銀座などで上映をすることとなっていたこの作品には縁があった。それは私が文化村ル・シネマでバイトをしていることだ。インターン中にル・シネマにチラシなどを送る業務をしている最中、それらをル・シネマのチラシラックでもう一度見る、というような体験は不思議なものであった。私にとって何か特別な気持ちを抱かせたこの作品は、連日多くの鑑賞客を迎えた。また、作品に対してこのような新鮮な気持ちを覚えることは、配給会社にいる醍醐味なのだろうと思う。

私は最後の勤務日に、「ここに来てよかったです」と言ったのだが、今でもそれは同じように感じている。その訳には、もちろん人の暖かさや先に言ったことが挙げられるのだが、それとは別に“業務内容”が特段私にそのような発言を促したと言っていいだろう。チラシや上映素材の発送作業は、おそらく他のインターン生も行う業務であると思う。事実、友人と話している際にそのような仕事内容のことについて話す機会もあった。しかし、私が今回体験させていただき、今でも身に染み付いている“電話業務”は、あまり他の生徒が体験し得ないことの一つであると思う。できることであればやりたくない、と思っていたといえば確かにそうであるし、進んで取り組む姿勢があったかと思えば初めは何もかもが上手くいかずかなり落ち込み気味であった。電話対応中、明らかに元気がなくなった口調になっていく自分を想像すると今でも恥ずかしい気持ちになる。しかし、今後私のようにセテラでインターンをする人がいるならば言いたいことだが、これは本当にためになるし、他のインターン生より自分は先に進んでいる、と思っていいほどのことなのではないかと思う。

では実際にどのような内容の電話をしたかというと大きく分けて二つである。電話を受けることと、自分から電話をかけること。とてもありきたりではあるがこれが難しく、最初は電話の受信音を聞いただけで緊張してしまい、声が震えた。ちょうどカンヌ国際映画祭が近かった日には外国人から電話がかかってきて本当に焦った。私は英語で喋っている相手に日本語で返すというなんとも気味の悪いことをしてしまった。自分の語学能力の無さを痛烈に実感した。それを見越して英語対応マニュアルをいただいたのだがそれ以降使う機会はなかった。それは今でも自宅に大切に保管している。電話対応の基礎が身についたと実感したのは、別件で出版社に電話をした際のことである。私はそこで先方から「学生じゃないと思ったよ、ずいぶんしっかりしてるね」と言われ、とても自信がついたことを覚えている。それからというもの、セテラでチラシ撒きの電話をかける際にも、その都度社員の方からアドバイスをいただき、徐々にそれなりに喋れるようになっていった。このように、今後必ず将来役に立つ仕事を私は体験したのである。

また、普段から映画を学ぶ身として大変興奮したのは、配給する映画の試写会で運営を行ったことである。試写会に訪れる人たちはどのような人たちなのだろうという疑問もあった。しかし何より感動したのは、試写会後にその専門家の方達が映画について話し合っている光景である。普段の映画館では絶対に見ることのできない上映後の風景を目の当たりにしてとても興奮した。また、配給会社の仕事の魅力を再度痛感した。このように挙げればきりがないインターンでの数々の経験は、普段から映画を見ることしかしない私にとって貴重な経験であり、今後の映画との関わり方に新たな道筋を与えるものであった。セテラ・インターナショナルの皆様には、不甲斐ない私を丁寧に迎え入れてくれたことに感謝を申し上げたい。

2025/01/10

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