日本大学芸術学部映画学科

映像表現・理論コースの2年生の授業の、シナリオ専攻と映像専攻の合同実習のシュートフィルムの撮影が進行中です。
今日は、A班の撮影風景とシナリオをアップします。

『四月四日爆弾』の撮影初日の風景。

『四月四日爆弾』の撮影初日の風景。

『4月4日爆弾』撮影初日の風景。

『4月4日爆弾』撮影初日の風景。

 
『4月4日爆弾』  決定稿

【登場人物】
○A太郎(20) 高偏差値の学校に通うメ
         ガネをかけた男。
○B子 (20) 金持ちで傲慢な女。
○C助 (20) 貧乏で学のない男。女に
         モテる。
○爆弾 (声のみ)突如現れた人間を選定す
         る爆弾。4月4日に人間
         にとって不必要と判断し
         たモノ一つを消滅させる。

○S1 黒み
A太郎の声「この世界で最も必要のないもの
 は戦争だ」
B子の声「この世で最も無くならないといけ
 ないのは犯罪ね」
C助の声「俺は人種差別だと思うな」
A太郎の声「核爆弾は絶対に無くさないとい
 けない。なぜなら・・・」
B子の声「ナイフとピストル。武器がいらな
 いのよ。だって・・・」
C助の声「老若男女、人種に障害関係なくみ
 んな手を取り合って・・・」
   落ち着いたトーンで発せられる似たよ
   うなセリフ(最もらしい感じのものや、
   軽口)がオーバーラップで重なって・・・

○S2 場所1
   閑散としたロビー内。
   3人の男女(A太郎、B子、C助)が
   緊迫した表情で女神像の足元を見つめ
   ている。
   そこにはボーリングの球ほどの大きさ
   の黒い球体が不気味に佇んでいる。
   その球体のすぐ真下に置かれている電
   子時計が刻々と止まることなく時を刻
   む。
   表示されている日にちは「4月3日」。
   拳を握り締めるA太郎。
A太郎N「消去までのタイムリミットは、あ
 と1日を切ってしまった」

○S3 タイトル
タイトル「4月4日爆弾」
   爆弾をバックにタイトル

○S4 場所1
C 助「なぁ・・・おい、おい・・・!」
   二人考え込んだ顔でC助の言葉に耳を
   貸さない。
C 助「おい! 聞いてんのかよオメェら!」
B 子「聞いてるわよ! ギャーギャーギャ
 ーギャーうるさいわねぇ!」
C 助「なんだとこのクソアマ!」
B 子「何よ! この低所得者! 貧民! 
 能無しのクズ人間!」
C 助「んだとテメェゴラァ!」
   C助、B子に掴みかかる。
B 子「ちょっと! 残飯と泥のついた不衛
 生な手で触らないでくれる!?」
A太郎「やめるんだ二人とも!」
   A太郎、二人の仲裁に入る。
   B子、C助、息を荒げ睨み合っている。
A太郎「もう時間がない、つべこべ言わず3
 人で協力をしよう。考えるんだ」
B 子「考えるですって? もう十分すぎる
 ほどにやったじゃない!」
C 助「そうだ! 勝手に仕切りやがって! 
 どうせ俺たちはテメェとおつむの出来が違
 うんだよ!」
   A太郎、そっと自らの顎に手を添える。
A太郎M「そうだ。俺たちはずっと考えてた」

○S5 教室・回想
A太郎N「あの日から、より良い方向に選定
 されるために」
   誰もいない教室。
   投げ込まれるように衣服や持ち物が現
   れる。
   そのあとに転送されてくる全裸(と記
   載するが実際は最低限の下着姿で)の
   A太郎。
   A太郎、ゆっくりと目を開け、
A太郎「ここは・・・?」
   秒針の音だけが虚しく室内に響いてい
   る。
A太郎「!!!」
   A太郎、自らが全裸であることに気づ
   き落ちてある衣服を拾って大急ぎで着
   用する。
   恐る恐るカーテンを開け、窓の外を見
   る。
A太郎「本当にどこなんだ?」
   そろりと教室の(後ろの)扉を出るが、
   前の扉から再び入ってくる。
   動揺し前の扉を勢いよくくぐる。が、
   後ろの扉から飛び出してくる。
   起こったことを理解できないといった
   ような表情でたじろぐA太郎。
爆弾の声「ここは協議用に用意した空間です。
 移動できる領域は制限されています」
   男性と女性の声が入り混じった機械音
   声がA太郎の背後から聞こえ、即座に
   振り返る。
   教卓の上にS1のように黒い球体(以
   後:爆弾)と電子時計が置かれている。
   電子時計に表示されている日にちは
   「4月2日」。
A太郎「な、なんだこれは」
爆 弾「私は人間を選定する・・・爆弾です」

○S6 トイレ?(変更してもいいです)
   服を大急ぎで着ているB子。
   鏡にのみ映る爆弾。
B 子「なによこれ!? 選定? 爆弾? 
 意味がわからないわ!?」
   財布を拾い、ゴミを払って中身を確認
   する。
   万札やカードが無事なのを確認して安
   堵のため息。
   鏡に世界各国の国旗が浮かび上がり日
   本の国旗がクローズアップされる。
   ※描写が難しい場合、爆弾が地球儀に
   なり日本の場所が光ったり、とか
爆 弾「あなた方3人はこの共同体の観察対
 象に選ばれました」
   

○S7 場所2
   空間(または壁)に投影されているA
   太郎、B子、C助の顔写真。
爆 弾「私は、あなた方の言動行動から人間
 にとって不必要なモノを学習し選定します」
   上半身裸のC助、
   この前話した引いてある境界線から出
   たら反対方向に引かれた境界線から現
   れるといった感じのやつをやる。
C 助「クソッ! なんだよどこなんだよど
 うなってんだよ!」
   息を切らしながら、地面に落ちている
   衣類の中からスマホを見つけ出す。
爆 弾「この地球で最も繁栄し、最も進化を
 しているのが人間です」
C 助「(舌打ち)」
   C助のスマホの画面をスクロールす
   る。連絡先には女性の名前ばかり。
爆 弾「私は地球及び宇宙の均衡を保つため
 生命体として不必要だと選定したものを排
 除します」

○S8 教室
   A太郎爆弾のセリフを聞いて、
A太郎「ふざけるな。なんの市場調査だか知
 らないがこれはれっきとした拉致行為だ!」
   A太郎、爆弾に掴みかかる。
   が、その腕は空を切り体勢を崩す。
   爆弾の声が背後から聞こえ(ここから
   セリフスタート)、振り返る。
   爆弾、別の机の上に移動している。
   A太郎、怯えた顔に。
爆 弾「選定対象になるモノは代謝や運動能
 力などの動物的能力から、生存本能に関係
 なく存在する文化や文明に至るまで、人間
 という生命体に関わるすべてです」

○S9 トイレ?
爆 弾「人間元来のモノ、人間が生み出した
 モノの中から選び、宇宙の保全のために消
 去します」
   B子、何度もスマホで外部に電話をか
   けるが、一向に連絡がつかない。
B 子「何よ! なんで繋がらないのよ!」
   爆弾、ピカリと閃くと、B子のスマホ
   がその手から消える。
B 子「何!? ちょっと冗談でしょ・・・? 
 本当に本物なの!? ねぇ!? 私をここ
 から出しなさいよ! 誰かどこかで見てる
 んでしょう!? お金ならあるわよ! ほ
 ら!」
   B子、財布から大量の万札をばらまく。
B 子「だから早く、早く返してよ!!!」

○S10 場所2
爆 弾「尚、選定の参考に当たってあなた方
 にも人間にとって不必要なものを協議して
 いただきます。手始めに協議に必要のない
 ものを消去させていただきました」
   C助、動揺した面持ちで何も持ってな
   い手を見つめている。
   その手をゆっくり握りしめ・・・
C 助「ここから出しやがれ!!!」
   見えない壁を殴る(入れなくてもいい)
爆 弾「選定完了までのタイムリミットは協
 議開始より48時間後の・・・」

○S11 場所1
A太郎M「・・・4月4日」
   A太郎、電子時計に表示されている「4
   月3日」の文字に視線を落とす。
   眉間にしわを寄せ、顎を撫でるA太郎。
   C助、しゃがみこみ爆弾をポンポンと
   叩きながら、
C 助「なんかいい案ねぇのか?」
   A太郎、爆弾に触れるC助に注目して
   いる。
   B子、雑に財布から何枚もの万札を取
   り出し、A太郎に押し付ける。
B 子「貴方、頭がいいんでしょう? この
 お金はあげるから、なんとかしなさいよ!」
   A太郎、押し付けられた金を払いのけ、
A太郎「この状況で君は・・・!」
   払われて地面に散らばるくしゃくしゃ
   の万札たち。
A太郎「こんなもの、ここではただの紙切れ
 だ。何も価値を有さない!」
B 子「何をしているの!?」
   B子、落ちた万札を即座にかき集め、
   埃を払うような仕草。
   C助、ゴミを見るような目でB子を見
   下ろし、
C 助「あんた、俺が見てきた女の中で一番
 意地汚ねぇ。地雷だよ地雷。絶対に俺が唾
 つけねぇタイプだ」
B 子「なんですって?」
C 助「胸糞悪いんだよ! 金でなんでも解
 決できると思ってる奴は!」
A太郎「(静かめに)やめてくれ・・・」
C 助「金を消してもらおうぜ! そうすり
 ゃ俺も女どもに奢らずに済むしな!」
B 子「ちょっと、お金を消されるのは困る
 わ! 少なくとも私たち全員がなくなって
 も困らないものを選びなさいよ!」
A太郎「やめてくれ」
C 助「金は格差を生む。俺とテメェみたい
 にな。金さえなければオメェみてぇな女
 も! 俺みてぇな男も生まれてこなかった
 んじゃねぇのか!? アァン!?」
B 子「何よ怒鳴っちゃって。そんなの貧乏
 人の発想じゃない! この世で一番必要な
 いのはあなたみたいな持ってない人間よ! 
 あなたは人間様以下、猿なのよ!」
C 助「んだとテメェ! 女のくせによォ
 ッ!」
A太郎「やめるんだ! ・・・この言い争い
 も、見られてるかもしれないんだぞ・・・!」
   一同、爆弾を一瞥してすぐさま沈黙。
C 助「ざけんじゃねぇよ!!!」
   C助、思いっきり爆弾を蹴り飛ばす。
   C助以外、固唾を飲み爆弾を目で追う。
   宙を舞う爆弾、ガシャっという音を立
   て地面に落ちる。
   小さくヒビが入る。
B 子「貴方正気!?」
C 助「ああ正気だよ! こんなもんなくな   
 っちまえばいいんだよ! だいたい、こん
 なちっぽけな球っころに人間にとって不必 
 要なものを消せるはずねぇだろ!!!」
A太郎「確かにちっぽけに見えるが、俺たち
 をこの空間に閉じ込め、実際にケータイを
 消されているのはまぎれもない事実だろ
 う! 君の行動は軽率だ! もし仮にこれ
 が爆発でもしたら・・・」
   空間にノイズが入る
   全員驚いて周りを見る。

○S12 白い空間
   ※3人と転がった爆弾の位置関係はそ
    のままで場所が変わる。
B 子「ほ、ほら、あなたがそんなことする
 からおかしくなっちゃったじゃない!」
C 助「(舌打ち)」
A太郎「最初に現れた爆弾や、この空間も、
 一種のホログラムだったということか? 
 それも、質量を伴ったかなりハイテクノロ
 ジーな・・・」
   A太郎、ブツブツ呟きながら爆弾を拾
   いに行く。
   持ち上げる際、さっきの衝撃で爆弾に
   入った小さなヒビを見つける。
   ヒビを見つめるA太郎。
B 子「キャッ!」
   A太郎、とっさに振り返る。
C 助「(頬を触りながら)どうなってんだ
    よ!?」
   空間の奥に全裸のA太郎、B子、C助
   が眠っている。
   A太郎、唖然とするが全裸B子を見て
   慌てて目をそらす。
   B子、上着を一枚脱ぎ、大急ぎで全裸
   B子の体にかける。
B 子「勝手に見ないでよ変態!」
   同じようにそれぞれの体に上着をかけ
   るA太郎とC助。
C 助「説明だ、説明しろこれを!(もう一
 つの体を指差す)」
A太郎「・・・確かに、不思議だった。何も
 食べず、何も飲まず、排泄さえもせず、約
 二日間・・・なんともなかったことが」
     ×   ×   ×
   フラッシュ
   S5、全裸に気づき服を着るA太郎。
     ×   ×   ×
A太郎「思えば、ここに呼ばれた時、肉体と
 身ぐるみが分けられていたことにも違和感
 はあった。切羽詰まってそれどころじゃな
 かったから・・・考えていた暇がなかった
 けど」
C 助「だからなんで! どうして体が二つ
 あるんだよ!」
A太郎「おそらく・・・この体も、今までい
 た空間と同じような質量を持ったホログラ
 ムだったんだ」
B 子「・・・もっとわかりやすく言って?」
A太郎「言うなれば、アバターなんだ。今の
 この体は」
   A太郎、手に持った爆弾をポンポンと
   叩く。
A太郎「質量もあるし五感もある。もちろん
 感情も思考回路も。ただ、より正確な協議
 のために、思考を乱す恐れのあった生理現
 象等をあらかじめ排除しようとしてこうし
 た手間のかかることをしたんだと思う」
   C助、自分の体に視線を落とし、
C 助「じゃあ、こっちの体が本体なんだよ
 な?」
B 子「すごい、変な感じね・・・」
A太郎「ああ、自分で説明づけてなんだが・・・
 理解は追いついていない」
   A太郎、爆弾を叩く手を止める。
A太郎「(閃いて)そうだ!」
B 子「何か・・・いい案でも?」
A太郎「(小声で)壊せるじゃないか・・・」
C 助「なんだよ? もっと大きな声で言っ
 てみろよ」
A太郎「壊すんだよ、これを!」
   A太郎、爆弾を見せる。
A太郎以外「ハァ!?」
C 助「お前ほんとに頭いいのかよ? それ
 とも狂っちまったのか?」
A太郎「壊すことでこいつらに学習させるの
 さ、人間にとって本当に不要なのは『訳の
 わからないお前ら宇宙のしきたり』だって
 な」
   A太郎以外、目からウロコを体現した
   かのような表情。
B子「・・・でも、そもそも、それを壊すこ
 とができて?」
A太郎「あぁ! これを見てくれ」
   A太郎、ヒビの入った爆弾を渡す。
A太郎「これは爆弾と名乗ったが、爆発物じ
 ゃなかった。ただ自らの存在をこの星の言
 語で当てはめていただけだったんだ! そ
 して、さっきの衝撃でひび割れるほど素材
 は脆い。だから俺たちの力でも十分にこれ
 を壊すことができるはずだ!」
   A太郎、C助の肩を叩く。
A太郎「君があんなことをしなければ気づけ
 なかっただろう。ありがとう」
C 助「(照れ笑いしながら)おうよ!」
   手に持っていた爆弾を思いっきり地面
   に叩きつけるA太郎。
A太郎「この体にも質量を与えてしまったの
 が裏目に出たな!」
B 子「なら、そうと決まれば・・・」
C 助「やるっきゃねぇな!」
A太郎「他の国の対象者もこの答えにたどり
 着いていると信じて・・・!」
   爆弾をグシャグシャに踏み潰す一同!
   踏み潰す度、爆弾の中から未知の電子
   盤や部品、配線が飛び出してくる。
   しばらくの間踏み続けた挙句、あたり
   はガラクタまみれになった。
   荒い息遣いでその場に立ち尽くす3人。
B 子「・・・やったの? これで終わった
 の?」
   瓦礫の一部がみるみる組み上がり不気
   味な形を形成する。
C 助「おい、冗談だろ!?」
   A太郎、身構える。
爆 弾「(雑音混じりで)観察対象にした共同
 体の約八割以上が同じ解答を導き出しまし
 た」
A太郎「やった・・・! 世界中の対象者
 も同じようにやったんだ!」
「これにより人間にとって不必要なものが選定されました」
  一同、勝利したかのようにすがすがしい
  表情。
爆 弾「選定の結果、人間にとって不必要で
 あるものは『理性』であることが判断され
 ました」
   3人、絶望に引きつった表情に。
B 子「えっ? 理性?」 
A太郎「そんな・・・そんなはずはない! な
 ぜだ!? なぜ!?」
爆 弾「熟考の先にあるものが暴力である
 ならば理性なんて必要ありません。力で全
 てを解決するのならば知恵なんて必要あり
 ません」
   電子時計、時間が加速度的に早くなっ
   てゆく。
   C助、A太郎に掴みかかる。
C 助「おい! 正しい答えだったんじゃね
 ぇのかよォ!」
A太郎「そんな! うそだうそだうそだうそ
 だうそだうそだうそだうそだうそだ!!! 
 俺の知恵が、考えが! 間違ってるはずが
 ない!!!」
   さらに加速を続ける時間。
爆 弾「今回の観察の結果、人間は理性を
 有するには早すぎた生命体と判断されまし
 た。選定項目を消去します。3、2、1・・・」
   カウントダウンとともにスマホの時計
   が4月3日23時59分57、58、
   59と時を刻んでゆき・・・
A太郎「待っ・・・」
爆弾の声「(被って)0」
   スマホの表示は4月4日0時00分
   00秒となった。
   爆弾がカッと光り、ホワイトアウト。

○S13 同・時間経過
   3人のアバターがいた場所にはそれぞ
   れ着ていた服が落ちている。
   全裸で眠っていた3人が次々に目を覚
   ます。
   3人がフラフラと立ち上がると、かけ
   てあった服がするりと落ちて裸になる。
   3人は全裸でいることに恥ずかしがる
   こともなく、虚ろな瞳でそろそろと歩
   き出す。
   さっきまで着ていた服を踏むが、目も
   くれず歩みを止めない。
   どこかへ去ってゆく3人の後ろ姿がA
   太郎のかけていたメガネに反射して写
   る。
   3人の足音は、遠ざかって・・・

2017/05/20

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