日本大学芸術学部映画学科

映像表現・理論コース

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 平成24年度から、それまでの〈理論・評論コース〉〈映像コース〉〈脚本コース〉が一つになり〈映像表現・理論コース〉が生まれました。理論と研究を基盤としたカリキュラムを基礎とし、学生はそれらの科目群を習得し、専門分野での作品創作や研究をする【理論・批評専攻】【シナリオ専攻】【映像専攻】に進みます。専攻は2年から分かれますが、カリキュラムは横断的に組み合わされていて、実際には3年生からが、主な研究・創作となります。
 映像を取り巻く状況は常に変化しています。民生機(一般に市販されている機器)でもフルハイビジョンや4Kの画質の映像の撮影ができ、また誰もが使っているパソコンで編集や特殊効果ができます。〈映像表現・理論コース〉は、そのような映像機器が扱いやすくなった状況をフルに活用し、研究やアイデア、企画立案などのディスカッションやプレゼンテーションにカリキュラムの多くの時間を費やし、発想の力を養うことに重きをおいています。
 最終的に学生たちは、映画史の探求や映画・映像論などの〈論文〉、人間ドラマやエンターテインメント、アニメの〈シナリオ〉、ショートフィルム、ドキュメンタリー、アニメーション、メディアアートなどの〈創作物と研究副論文〉を完成させます。また、映画・映像ビジネスの講座を設け、実際に〈映像表現・理論コース〉の学生たちが映画祭を企画し開催し、映画・映像ビジネスに対応した能力、新たな映像ビジネスを開拓する能力を養います。
 このページでは、〈映像表現・理論コース〉の授業やイベントの紹介やその様子、またインターネットに載せた創作作品へのリンクなどが貼ってありますので、私たち〈映像表現・理論コース〉を、ちょっと覗いてみてください!

2024年度インターンシップレポート第2弾です。今回、インターンシップで学生を受け入れていただいた企業は、松竹音楽出版株式会社です。

インターンシップ報告書

門田あみ

6月から8月頭にかけて松竹音楽出版株式会社のインターンシップに参加した。音楽出版と聞いて出版系の職場を想像していたが、実際は映画のサウンドトラックを扱う部署だった。主な仕事としてサントラの著作権管理のためのデータ入力や契約書の整理などをやらせていただいた。データ入力のなかで今までに観た映画を目にすることもあった。「映画」と「音楽」を今まで結びつけてこなかった私にとって自分の知っている映画と音楽家の関わりを見れたのはとても新鮮な経験だった。また、この時に映画音楽を専門に作る音楽家がいることを初めて知った。社員の方によると普段音楽家として活動されている方が映画のサントラを作ると音楽が映像の邪魔をしてしまうこともあるそうだ。画があることを想定して作る音楽は場面を効果的にしながら、あくまでも背景でなければならないという狭間のなかで作り出される絶妙なバランスのなかで生まれるものだと感じた。この映画音楽の2つの要素を実感する出来事があった。デスク作業のなかでまだ公開されていない映画のサントラの秒数を記録する仕事をさせていただいた。その時に何度かサントラが流れているのを忘れて場面に没入してしまうことがしばしばあった。この時私はサントラの存在によってより魅力的になった場面に夢中になりながらもそのなかで大きな役割を担っているサントラの存在に気がつかずにいた。聞くことを目的としていない映像を生かす存在として改めて映画音楽を意識するきっかけだった。

また、実際に映画のサントラを録音する現場や最終的な音の調整を行う現場も見学させていただいた。録音の現場では映画の映像を流しながら演奏家が別室で場面ごとの曲を演奏していた。作曲家の方がリモートで曲の雰囲気などを指示し、演奏家の方がそれを受けて演奏する形だった。録音中に印象に残ったのが演奏家の方の曲の飲み込みの早さだった。同行させていただいた社員の方によると、やはり楽団に所属する演奏家の方よりもフリーで活動されている方のほうが楽譜を読んで演奏にするまでが早いのだそうだ。映画、特に劇映画は物語であるから登場人物の状況や心情は話が進むにつれて移り変っていく。それに伴ってサントラも同じような曲調が続くのではなく様々な曲が1本の映画のなかで登場する。ひとつの世界観をもった1曲ではなく、異なる雰囲気や世界観を持った様々な曲で映画音楽は構成されている。それに対応する演奏家の方の技術力に驚いた。

https://www.youtube.com/watch?v=l8Hgk3F9TN4&list=PLJ_0fCJ-j80J-tO_J6v9-pEPFn_ccXRZ0

(レコーディングの様子の一例です)

そして最終的な音の調整の現場ではサントラだけでなく人物のセリフなど映画全体の音を調整していく作業を見学させていただいた。監督がその場で指示を出し、音量や曲の強弱、長さなど細かい部分を調整していく作業だった。セリフや音楽だけでなく足音や物音など直す前に違和感を感じなかった場面であっても監督が指示を入れる前と後とではまったく違った印象を受けた。現場は映画館と同じ作りになっていて、劇場で流れている場面が想像しやすかった。録音、調整を通して映画が作り上げられていく現場を見学できたことはとても貴重な経験だったと感じる。

約3ヶ月のインターンシップで報告書に書いたことのほかにも様々な経験をさせていただいた。会社に通うということ、会社で働いている大人の方と話すことも当たり前に見えて普段の学生生活のなかではなかなか経験できないことだったと感じる。映画製作の現場を見させていただいたことも自分のなかで学びになったと思うが、現場の方や会社の方との会話や見学に行かなければ絶対行くことのなかった駅や街を見ることができたのも自分の中で得るものがあった。映画学科だからではなく一学生として学ぶことの多い有意義な経験をさせていただいたと感じている。

インターンシップの様子


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2024/09/30

映表理の授業〈映画ビジネスⅢ〉では、春から受講生がインターンシップを行っています。インターンシップが終了した学生からレポートが提出されました。

2024年度の第1弾となります。
インターンシップで学生を受け入れていただいた会社は、「株式会社パンドラ」です。

インターンシップ報告書

清水千智

私は4月から9月の間に計20日、株式会社パンドラでインターンシップを行なった。パンドラでの仕事は、まず事務所の掃除から始まる。有楽町線の新富町駅から徒歩数分にある、5階建ての小さなビルの3階に事務所はある。出勤して、代表の中野さんと女性社員さんに挨拶をすると、早速掃除機で床の掃除を始める。掃除機を使う際には窓を明ける必要があった。猛暑日が多く、部屋には蒸し暑い空気が入ってくるためよく汗をかいた。床掃除の後は、窓を閉めて、トイレの掃除、キッチンシンクの掃除、資料が置かれている棚の埃拭き、玄関前の箒がけと続いて、新聞や再生紙が溜まっていたら捨てやすいようにテープでまとめておく。ちょうど出勤日の翌日が再生紙回収の日だった。

事務所の掃除が終わると、いよいよ映画に関する業務が始まる。宣材や商品といった荷物を発送するための梱包作業から始まることがほとんどであった。梱包するものは主に、チラシ、ポスター、パンフレット、上映素材、書籍である。インターンシップ期間中に公開していた、もしくは公開予定であった作品は、『ナチ刑法175条』『私の物語』『助産師たちの夜が明ける』『この星は、私の星じゃない』であった。これらの作品の宣材について、どの劇場に何枚チラシを、何枚ポスターを送ってほしいといった指示を受ける。一度に数箇所に送ることも多かったので、混乱しないように伝票から先に書くと良いと教わった。チラシは一度に数百枚から、多いと数千枚を一つの劇場に送るが、それでも後日、追加のチラシを送ることもあった。数百枚であれば封筒に入れて送ることができるが、数千枚となると段ボール箱を使うことになる。丁度良いサイズの段ボール箱があることは少なく、オーバーサイズの箱をカッターで切ってサイズを合わせる。ポスターの場合だと、ポスターのサイズに合わせて段ボール板から自分で箱を作ることがほとんどであった。ピッタリのものが常に用意されている訳ではない。パンフレットはチラシと違い、送る部数は少ないが商品なので、納品書を入れ、梱包には細心の注意を払う。

商品というと、パンドラでは配給業務の他にも、書籍やDVDの販売を行なっている。書籍を発送する際には、公開中(公開予定)のチラシを同封するのが肝だ。オンライン上で購入されたものを発送するが、書店や映画館でも販売しており、ヒューマントラストシネマ有楽町まで納品しに行くこともあった。普段は客として接している従業員の方と、今度は取引先として会話するというのは不思議な感覚だったが、冷静に考えれば映画の仕事をするということはそういうことだ。他にも、上映素材を目黒シネマまで納品しに行ったこともある。目黒シネマは入り口前に券売機があり、入るとすぐ受付がある。パンドラの「名札」を首から下げている訳でもない(そもそもそんなものはないが)、私服の大学生が入るのだから客と間違われても仕方がない。パンドラの者ですとアルバイターに告げた時もこれまた不思議な感覚になった。しかし、書籍にせよ上映素材にせよ劇場に納品しに行って担当の方と顔を合わせると、自然と尊敬の念が起こり、気が引き締まるのだ。劇場とはパンドラで行ってきた仕事が実を結ぶ場所である。日々積み重ねてきた細かな仕事は、全て上映のためのものであり、彼らの仕事によって私たちの仕事は完結し、報われる。これも当たり前のことだが、私がそこに感謝の念を抱いたのは、基本的に一日中事務所にいて、さまざまな仕事を同時並行で進行する中で、業務に気を取られてそんな単純なことに気づく余裕がなかったからだろうかと、振り返れば思う。初めは仕事を覚えることに集中していたこともあり、依頼された仕事の一つ一つはバラバラの業務と思っていたが、事務所から出て取引先の方と直に顔を合わせると、観客として赴くのとは全く違う考えになる。こういったことも、パンドラで日々の仕事を積み重ねてきたから感じられるようになったのだと思うと、インターンシップという体験がいかに貴重で重要なものかが分かる。

パンドラでの仕事は他にも様々ある。宣材や商品の発送には宅急便を使うが、月ごとに利用金額を確認して伝票に書き出す。試写状やチラシを送るための送り先リストをつくり、リストを元に宛名をエクセルに書き出してシールに印刷、ハガキの束やチラシを入れたOPP袋の一枚一枚にシールを貼ってゆく。作品が紹介されている新聞や雑誌などのページはコピー機でスキャンする。近場の試写室にチラシを置きに行くこと、銀行や郵便局までお使いを頼まれることもあれば、事務所にお客様が来たときはお茶を淹れることもある。どの仕事にしても、中野さんや社員さんから一点一点を細かく教えていただいたので、とても勉強になった。インターンは雑務が基本、と事前に先生から聞いていた。雑務と聞くと嫌がる人も多いと思う。しかし、「雑務」は仕事の最小単位である。最小単位が見えなければ、仕事を正確に理解できない。すなわち、何か問題が起きた時に、正しく改善することもできないし、日々の仕事が組み合わさって結果を生むということも感じにくくなる。掃除に始まったパンドラでのインターンシップで、私はその最小単位を、他では経験できない貴重な体験をさせて頂いた。20日間、身体を通して得られたこの経験は将来、必ず活かされるだろう。お世話になったパンドラの皆様と取引先の方々に敬意を込めて、改めてお礼申し上げます。

「パンドラ」でインターンシップをおこなっている様子


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2024/09/30

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