日本大学芸術学部映画学科

映画ビジネスⅢ」のインターンシップ報告、第5弾です。
今回は、株式会社IMAGICAでインターンシップを行った、小野寺くんの報告です。

インターンシップ報告レポート

小野寺但馬

この度、私はIMAGICAの映像事業本部 プロダクション部 アーカイブ・グループにて、インターンシップを経験させていただきました。
アーカイブ・グループは、旧作映像の修復と、他メディアへの変換を主な事業としている部署です。フィルムからデジタルまで、あらゆるノウハウを熟知されている技術者の方々が、過去の映像を後世へと受け渡すための作業に尽力されていました。今回のインターンシップでは、その現場を見学し、作業に行われている方々にお話を伺うのみならず、実際に修復作業の工程を体験させていただきました。
 アーカイブ・グループにフィルムが運び込まれた場合、まず「整理場」と呼ばれる物理的な処理を専門とする部門に届けられます。整理場では、フィルムの劣化状況を調査し、さらにパーフォレーションの破損や、カールと呼ばれる湾曲などフィルムの物理的な劣化を元に戻すための修復作業も行われます。
私は、練習用のロールを使いながら、巻き付けの緩いフィルムを再び巻き直す作業を行いました。フィルムの扱いに慣れていない私にとって、リワインダーを使いながら実際に巻き取ってゆく作業は、緊張を伴うものでした。さらに、持ち込まれるフィルムの中には、誰もがその名を知る名作映画の原版もあります。初めは、それらのフィルムを前にし、ただただ臆してしまうばかりでしたが、整理場の方々から、丁寧に扱い方を教えていただくうちに、フィルムを触ること自体にも慣れてゆき、最終日には、巻取り作業を一通り行えるようになりました。
 その他にも、フィルム現像のワークフローや、自社開発のフィルム・クリーナーの使い方、無声映画時代に行われていたフィルムの染色技術の工程と原理など、たくさんのことを教えていただき、東洋現像所時代から続くIMAGICAのフィルム技術の一端を伺い知れたように思います。
 整理を終えたフィルムは、デジタル修復を施す場合、スキャンニングを経て、デジタル・レストレーションルームへ運ばれます。デジタル・レストレーションでは、専用のソフトウェアを用いて、フィルムについた傷やホコリ、染み、走行時の揺れなどの物理的な処置では対応出来ない劣化を、デジタル技術を用いて修復します。今回のインターンシップでは、そのようなデジタル修復の工程も体験もさせていただきました。
作業は、ソフトウェアの自動修復処理から始まります。しかし、自動処理は、劣化箇所の判別に限界があるため、作業工程の大半は、全て人の目で1フレームごとに修復、確認を繰り返しながら行われます。
 実際にその作業を行ってみると、映画1本分の修復が、多大な時間と労力を要するものであるということを強く実感しました。1秒24コマ、映画の全てのフレームを見てゆく作業は、普段の映画鑑賞とは全く違う体験でした。とりわけ、製作年が古く、状態の悪いフィルムであると、ほぼ全てのフレームに、無数の傷や汚れが存在し、修復作業も一朝一夕では終わりません。長期間に渡り一本の作品と向き合う集中力と、劣化箇所に対し手早く修復を施す手腕が求められているように思われました。しかし、それだけの労力を要するだけに、試写室で見せていただいたデジタル修復作品の美しさは、修復前と比較にならない程に感動的なものでした。
 普段、座学を中心に映画を学んでいる私にとって、この1ヶ月間は、映画復元技術とその実際について学ぶ最良の機会となりました。映画の技術的側面の知識に乏しかった私に、社員の方々は、フィルムの現像工程からデジタルの基本的な知識まで、親身になって教えてくださいました。今回、インターンシップとして受け入れてくださった上に、さまざまな貴重で、刺激的な体験をさせていただいたIMAGICAアーカイブ・グループの皆様には、大変お世話になりました。本当にありがとうございました。

インターンシップを行なっている小野寺くんの様子。

インターンシップを行なっている小野寺くんの様子。

2017/10/23

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