日本大学芸術学部映画学科

前回、映表理2年生のA班の撮影の様子をアップしましたが、今日は、B班の先週の撮影の様子と完成シナリオです。

『君の顔は。〜your face〜』の撮影の様子。

『君の顔は。〜your mask〜』の撮影の様子。

『君の顔は。〜your face〜』の撮影の様子。

『君の顔は。〜your mask〜』の撮影の様子。

 
「君の顔は。
    ~your mask~」

登場人物

山元(19) 顔面が下の中くらいの評価。大学
デビューでとりあえず茶髪に染めて
みた。大抵パーカーしか着ない。気
楽に生きているが自分の顔面を憎
んでいる。コミュ障。

山田(19) 山元の大学の友人。黒眼の黒髪。
デブで好きな事になると早口になる。
顔面評価は山元と同じくらい。最近は
ソーシャルゲームにハマっているゲー
ムオタク。コミュ障。

樹(19)  イケメン。遼の友人。人生不自由して
いない。常にギターケースを背負って
いるのはオシャレだから。

遼(19) イケメン。樹の友人。イケメンにしか許さ
れないタートルネックにロングコートを見
事に着こなす。 

1 校舎の外・昼
  五月の晴れた日。
  校舎の風景。男女グループが楽そうに騒      
  いでいる。また、別の男女は寄り添って  
  イチャイチャしている。
    
2 ベンチ・昼
  ベンチに無気力に山元(19)と山田が腰かけ
ている。山田、前のめりでスマホの画面を覗
き込んでいる。山元、天を仰ぎ、深くため息を
吐く。
山元「なあ、友よ」
  山田、スマートフォンで音楽ゲームをやっている。
  指がせわしなく動いている。画面から目を離さない。
山田「今話しかけんな……。くそっ、コンボ切れた」
  山元、また天を仰ぐ。
山元「世の中には理不尽なことがたくさんあると思わないか?」
  山田、音ゲーを続けている。適当に相槌を打つ。
山元「例えばさ、さっきの学食のババア、目
 の前のイケメンにはカレールー福神漬けと 
 もに二倍くらい盛ってたじゃん」
  山田、曲が終わり顔を上げる。
山田「声も高かった」
山元「2オクターブぐらいな」
  山元、身を起こす。
山元「しかし次に並んでいた俺たちに対してはどうだった?」
山田「福神漬けとルーの量が圧倒的ゴミ」
山元「してそれはなぜだと思う?」
山田「なぜって、そりゃあ」
  山田、半笑い。
山元「俺たちがブスなせいだ!」
  山元、山田の方を叩く。山田、少し不機嫌な顔をする。
山元「イケメンにあげた分の福神漬けを結果的に俺たちが
 支払ってるってわけよ。俺たちが犠牲になることによって
 社会はバランスがとられてるんだ……。」
  山田、話に飽きてスマホをいじりだす。
山元「生まれたときから俺たちは損をしている……。こんな顔
 に生まれてこなければよかったことって数えきれないくら
 いたくさんあるんじゃないのか?」
 山元、勢いよく立ち上がり熱弁。
山元「俺たちが目の前の人の落とし物を拾ってあげたのに嫌
 な顔されるのは?」
山田「俺たちがブスだから」
山元「じゃあ、女の教授がイケメンを贔屓しているように感じ
 るのも?」
山田「俺たちが卑屈なブスだから」
  山元、うんうんと首を縦に振る。
山田「じゃあ、推しのSSRが出ないのも?」
  山田、急に立ち上がり、山元に指をさし、
  大声を出す。
山元「俺たちがブスなせいだ!」
  二人がハイタッチをする。
  山田、落ち着きを取り戻し、席に着く。
  前方から樹(19)と遼(19)が歩  
  いてくる。
山元「見ろ山田、イケメンが人生楽しそうに歩いてくるぞ」
山田「……イケメンに生まれたかったよなあ」
  ため息を吐く山田。
山元「はあ……こんな憂鬱な気分だってのに、空はいつでも
 晴れ晴れとしているな、山田!」
  山元と山田、天を仰ぐ。
  急にバケツをひっくり返したように山田
  と山元の真上で大雨が降りだす。

3 外・昼(同時刻)
遼「お前、いっつもギター持ってるけど、お前が引いてるとこ
 ろ一回も見たことないんだけど」
  樹と遼、歩きながら話している。
樹 「当たり前じゃん、これギター入ってねぇもん」
  そう言い、ギターケースを開けると、中
  には筆箱やノートなどが入っている。
遼 「なんだそりゃ」
樹 「一回やってみたけど、全然上達しねぇからやめた」
  遼、左腕にシルバーの腕時計。
樹 「あれ、お前そんなん持ってたっけ」
遼 「貰い物だよ」
樹 「えー、めっちゃいいじゃん、誰から?」
  遼が首をかしげる。
遼 「誰だっけ?忘れた。女、女」
樹 「うわ、最低」
遼 「お前だって、年増女に貢がせてたじゃん。あの女最近
 見かけないけど。」
樹 「何か、最近文句多くなってきたから捨てたぁ」
遼 「最低かよ」
  樹と遼、笑っている。歩いていく先に  
  雨に打たれている山田と山元。
樹 「うわっ、なんであそこだけ雨降ってんの?」
遼 「めっちゃ惨めだな。写真とっとこ!」
  遼、スマホを取り出す。

4 ベンチ・昼
山元「くそっ、ブスは天気にまで嫌われる!」
  遼がスマホで写真をとる。シャッター 
  音に気づく山田。
山田「あっあいつら!お、俺たちのことを写真に撮ってインスタ
 グラムにでもあげるつもりだ!やめろ!」
山元「肖像権の侵害だぞ!」
  遼と樹が大笑いしている。
  空が光り、四人に雷が落ちる。
  四人の叫び声。
   
×    ×      ×
  雨が止む。ボロボロの四人が転がってい  
  る。
樹(山元)「う……」
  樹、呻きながら起き上がる。
  遼、よろよろと起き上がってくる。
  樹、遼に気付く。
樹(元)「あっあの、あっすみません……あ、大丈夫でしゅか……」
遼(山田)「あっいやっ、あの、こちらこそ……へへ……すみません
 ……」
  遼と樹、ペコペコと頭を下げ合う。
樹(元)「あっまだ伸びてる二人、大丈夫ですかねえ……まさか
 死んじゃったり……」
  倒れたままの山元と山田。樹と遼、訝しげな顔をする。
樹(元)「眼の前で伸びている親近感の沸くこの絶妙なブサメ
 ンはもしや、俺?」
遼(田)「そしてこのスマフォに映っているイケメンは?」
 遼と樹、顔を見合わせ指をさし合う。
樹(元)「山田?」
遼(田)「山元?」
樹(元)「俺、山元」
遼(田)「俺、山田」
  樹と遼、歓声を上げてグータッチ。
樹(元)「えっ、めっちゃイケメンじゃんお 
 前」
遼(田)「これが……俺……?めっちゃテンション上がってきた」
樹(元)「え、いや、てかどうしよう、この人たち起きなくね?」
  遼、しゃがみ込み山田を揺さぶる。山田、起きない。
樹(元)「待て、起こすな!いいか、よくきけ山田、イケメンの人生を
 体験できる機会なんて多分もう一生ないぜ?今しかねえよ!」
  樹、遼を止める。
遼(田)「それもそうだ」
  遼、立ち上がる。
樹(元)「この二人が起きるまでは、ちょっとだけ楽しんでもよくね?」
遼(田)「それな」
  樹、遼、走り去る。
  山田と山元、倒れたまま。

5 食堂・昼
樹(元)「やばいな」
遼(田)「あぁ」
  二人、おぼんの上を見つめている。
  山のように盛られた福神漬けとルー。
遼(田)「大盛注文したっけ?」
樹(元)「社会は……こんな不平等でいいの かよ……?なぁ?」
  泣きながらカレーを貪るように食べている遼。
  それを見て食べ始める樹。

6 食堂外・昼
  二人、食堂から出てくる。
前方から女4人がやってくる。樹と遼の姿を見て声をかけてくる。
みき「あ、樹と遼だ!」
春佳「本当だ~!おはよぉ~!」
  遼と樹、後ろを振り向く。
遼(田)「え、僕?」
愛美「え、なになに、ボケ?ウける。てか樹、今日ギターは?」
樹(元)「え?あっ……わ、忘れままました」
みき「てか、樹がギター弾いてんの見てみた
 〜い!」
春佳「わかる〜!てかギター弾ける人って無条件でかっこよくね?」
樹(元)、遼(田)「えっ?」
  樹と遼、過剰に反応する。
七海「てか次授業でしょ?一緒に受けよ~」
  遼と樹、女腕を組まれ困惑。
樹(元)「え、あ?え?」
  樹と遼、女に連れられていく。
みき「てかなんか二人とも焦げ臭くない?」

7 教室・昼
  樹と遼、女に囲まれている。
みき「みて~これ超盛れてるっしょ」
スマートフォンの画面を見せてくる女。
遼(田)「んふ、いや、めっちゃかわいいです」
愛美「遼、キモい!」
  女たちゲラゲラと笑っている。
樹(元)「今まで言われてきたキモイと全くニュアンスが違う!これが
 ……イケメン?」
遼(田)「どうなっているんだ世界は」
  教室の扉が開く。山田と山元、教室内を覗いている。遼と樹を
  見つけ、指さす。
山元(樹)「いた!」
樹(元)「やばい山田!見つかった!」
  遼と樹、立ち上がり急いで教室を出る。
山元(樹)「あっ待てコラ!」
  山元と山田、後を追う。

8 教室棟裏道・昼
  前を走る樹と遼を山田と山元が追っている。
山田(遼)「待て!俺たちの身体を返せ!」
樹(元)「俺はもう戻らねえ!戻らねえぞ!」
遼(田)「ブスな自分とはもうおさらばだ!こんにちはイケメンの俺!」
山元(樹)「ふざけんな!俺の顔だぞ!」
  山田と山元、徐々に距離を詰めてくる。
樹(元)「クソ!あいつらブスのくせに早え!」
  樹、左腕の高価なシルバーの腕時計に目をやる。
樹(元)「山田!あと1分でバスが出る!うまくいけば乗り逃げできるぜ!」
バス停が見えてくる。樹、後ろを振り返りながら走っている。
遼(田)「俺、もうダメ」
山田(遼)、山元(樹)「うわっ」
  山田と山元、急に立ち止まる。Uターンして走り去っていく。
  遼と樹、足を止め走り去ってゆく山田と山元を見つめる。
樹(元)「気でも触れたか」
美香「ねえ」
  遼と樹、振り返る。女3人が不機嫌な顔で腕を組んで仁王立ちし
  ている。
樹(元)「え?あ、ぼ、僕?」
美香「は?覚えてないとは言わせないよ。散々貢がせといて、音信不通
 ってどういう事?」
沙羅「大学まで来るとは思ってなかった?早稲田生ってのも嘘だったん
 だね。調べたよ」
  美香と沙羅が詰め寄ってくる。
愛子「あたしがどれだけ苦労してこの時計プレゼントしてあげたと思っ
 てるの?人のクレジットカード使ってほかの女にプレゼント買ってたの
 も全部知ってるんだからね!」
遼(田)「い、いてっいてていて」
  愛子、遼の左腕を掴みあげる。
樹(元)「まっえ?何?俺本当に知らないです!」
美香「はあ?あったまきた」
  美香、樹の左頬にビンタ、そしてプロレス技をかける。遼、後ずさり。
  女たち、無表情で近づいてくる。
  樹と遼の叫び声がこだまする。

9 正門前・外
  遼と樹、仰向けに倒れ空を仰いでいる。
  二人とも顔の頬にビンタされた跡が残っている。
樹(元)「ろくなことがねえ」
  山田と山元が近づいてくる。倒れている二人を見下ろす。
山元(樹)「ひでえ……ここまでするとか女怖えな」
山田(遼)「いや、でも……助かったぜ。お前たちと入れ替わってたおかげで
 俺たちは痛い思いせずにあの年増達と縁を切れた」
  山田と山元、手を差し伸べる。
樹(元)「イケメンってろくな奴がいねえ」
  手を取り立ち上がる樹と遼。

10 (回想)クラブハウス棟・昼
山元Ⅿ「あの後俺たちは普通にもとに戻った。
 そして俺たちは打ち解け、lineを交換し、  
 勢いのままに4人でバンドを始めた。」
  遼はベース、樹はギター、山田はドラ  
  ム、山元はギターとマイクを手に持ち、  
  演奏の練習をしている。

11 ベンチ・昼
  ヴィジュアル系に転身した山元と山田、ベンチに座っている。山田、
  女とlineをしている。山元、空を仰いでいる。
山元「なあ、友よ」
山田「今話しかけんな……くそっ、誤字った」
山元「世の中には理不尽なことがたくさんあ
 ると思わないか?」
  山元、適当に相槌を打つ。
山元「して今は?」
山田「ブスだけど」
二人「ブスだけど!」
  女どもが一斉に群がって来る。黄色い声
  援が飛び交っている。
  二人、お互いを見合ってハイタッチをす
  る。  

2017/05/22

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