日本大学芸術学部映画学科

「映像表現・理論Ⅱ」の合同課題のシナリオについて、〈シナリオ専攻〉と〈映像専攻〉との打ち合わせなどがずっと続いていましたが、シナリオが完成しました。
2グループありますが、まずは1グループのシナリオをおしらせします。

今、学生たちはこのシナリオを元に、ロケハン、画コンテの作業をすすめています。
もう1グループのものは後日、おしらせします。

『私、花子と申します。』

登場人物
花子(19)…三つ編みメガネ姿の女の子。映画衣装に興味がある。
美月(19)…大学生。
和樹(19)…有名監督の息子。
学生1
女1
教授

1 教室
  三つ編み、メガネ姿の花子(19)がノ
  ートに何かを書いている。
  次々、おしゃれな格好をした生徒たちが
  教室に入ってくる。
  その中に和樹(19)がいる。
  和樹、花子のことをちらっとみている。
  花子、生徒たちと目は合わせないものの、
  みんなの服装を見ている。
花子M「みんな可愛い…可愛い…ああ、可愛
い」
  教授が教室に入ってきて、授業を始める。
花子M「せっかく大学生なんだから、おしゃ
れだって、もちろん、恋だってしてみたい
ものです。でも人間すぐ変わることはでき
ないんですよね。まず、友達すらいないで
すし…ああ、申し遅れました。私、花子と
申します」

タイトル『私、花子と申します。』

2 廊下
  花子、姿勢良く歩いている。そして、本
  や、スケッチブックを抱えている。
  前から、美月(19)と女1を含む数人
  の女の子たちが歩いてくる。
女1「美月それどこで買ったの?」
美月「これは、渋谷かなー」
女1「ほんとセンスいいよね」
美月「そうかなー?」
  花子と美月たちがすれ違う。
  花子の腕の本から、しおりが落ちる。
花子M「あの子がうわさの美月ちゃんかあ!」
美月「ねえ!」
気づかず進む、花子。
美月「ねえ、三つ編みの!」
花子M「今時、三つ編みしてる子なんて…」
花子「ん? 私?」
  花子、立ち止まり、振り向く。
  美月、花子のもとに駆け寄ってくる。
  花子、美月に見とれている。
美月「やっと気がついた…これ、落としまし
たよ」
  美月、しおりを差し出す。
花子「え? ああ…わざわざありがとう…」
美月「いえいえ。一年生だよ、ね?」
花子「はい。私、花子と申します」
美月「花子ちゃんか! ああ…あの」
女1「美月、早く! 講義始まっちゃうよ!」
美月「わかったー! じゃあね、花子ちゃん」
花子「あ…」
  美月、走っていく。
  花子、美月に見とれている。
花子M「なんて美しい人なんだ…」

3 ベンチ
  花子、映画衣装関連の本を読んでいる。
  ふと、しおりを見る。
  花子、一息をつき、しおりを本に挟む。
  花子、顔をあげると目の前に和樹が立っ
  ている。
花子「うわっ!」
和樹「こんにちは」
和樹、花子の隣に座る。
花子「こ、こんにちは」
和樹「えっと…名前…」
花子「花子と申します!」
和樹「ああ、そう、花子ちゃん!」
花子「あなたは確か和樹さんですよね。あの、
有名監督の息子さんの」
和樹「そうそう。名字で結構ばれちゃうから
困ってるんだよねー」
花子「そうですか。で、なにか御用でしょう
か?」
和樹「花子ちゃんさ、誰かと話してるの見た
ことないから、どんな子なのかなって」
花子「どんなって…」
  和樹、花子のカバンからスケッチブック
  が出ているのを見る。
和樹「絵描くんだよ、ね?」
花子「まあ…(時計を見る)あ、そろそろ授
業始まるので。では」
  花子、ベンチから立ち去ろうとする。
和樹「ねえ、ちょっと待って」
  花子、振り向く。
和樹「はい、これ」
  和樹、映画衣装デザインコンクールのチ
  ラシを渡す。
花子「なんですか、これ」
和樹「親父の知り合いが主催してるんだよね」
  ×   ×   ×
  フラッシュバック
  シーン1
  花子、ノートにデザイン画を描いている。
  ×   ×   ×
花子「へえ…」
和樹「試してみなよ! ね!」

4 掲示板前
  花子、チラシを見ながら歩いている。
花子M「試すっていってもな…それより、和
樹くんはなぜ、私になんかに声を…」
美月「はーなこちゃん!」
花子「あっ! 理想のヒロイン美月さん!」
美月「ん?」
花子「あ、すみません。気にしないでくださ
い」
美月「う、うん。…で、何それ?」
美月、チラシを見る。
花子「ああ…」
美月「興味あるの?」
花子「いや、なんというか…映画の衣装とか
好きで…ちょっと考えたりとかする程度で
すけど…」
美月「へー」
  花子、美月を見つめる。
花子M「美月さんあの服、似合うだろうな…」
美月「どうかした?」
花子「え、い、いや」
美月「私、花子ちゃんのこと応援するから、
頑張ってね!」
花子「ありがとうございます!」
美月「うん! じゃ!」
  美月、去る。
花子M「本当に優しいな…そして何より美し
い!」

5 ベンチ
  花子、美月をイメージしながら、夢中で
  デザイン画を描いている。
  美月のイメージ、デザイン画、イラスト。
  ×   ×   ×
  数時間後。
  花子、描き終える。
花子「できたー! ああ、疲れたー」
花子、時計を見る。
花子「うわ、こんな時間」
  花子、急いで荷物をまとめ、走り出す。

6 校門
  花子、走って校門の方へ行くと、和樹が
  いることに気がつく。
和樹「お疲れ様」
花子「ああ、どうも…誰かお待ちですか?」
和樹「花子ちゃん待ってた」
花子「私? なんで?」
和樹「見ーせて」
  和樹、スケッチブックを取り上げる。
花子「ああ、ちょっと!」
  和樹、気にせず中身を見る。
和樹「いいじゃん! すごくいい!」
花子「てきとうに言わないでいただけます」
  花子、スケッチブックを奪い取ろうとす
  るが、取れない。
和樹「これ、花子ちゃん似合うんじゃない?」
花子「バカ言わないでくださいよ」
和樹「本気だけど」
花子「はい?」
  花子、固まる。
和樹「とりあえず、これ借りるわ。じゃあ」
花子「え! ちょっと! コンクール出すん
ですから!」
和樹「花子ちゃん、チラシ確認してみな」
花子「え?」
  花子、カバンからチラシを出し、確認す
  ると、募集期間が去年である。
花子「うそ…」
  和樹、前を歩いて行ってしまっている。
花子「ちょっと、待ってくださいよ!」
  花子、和樹を2、3歩追いかけるが、足
  を止め、自分の胸に手をあてる。
花子M「ちょっと待って、このドキドキは何?」

7 学食
  T 『数日後』
  和樹と学生1がトイレの付近で美月を待
  っている。
  花子、食堂に入ってくる。
  花子は自分が描いた洋服を着ている。
  そして、三つ編みを下ろしている。
和樹「あ、花子ちゃん!」
花子「ど、どうも」
  花子、券売機の列に並ぶ。
学生1「花子ちゃん変わったよね」
和樹「あの洋服、親父の友達に頼んで作って
もらったんだよね」
学生1「さすが」
和樹「まあね」
和樹、花子の方を見る。
花子M「私なんかがこんなかっこしていいの
だろうか…」
  花子、和樹の方を見ると、和樹と目が合
  い、すぐそらす。
花子M「うわーなんでこっち見てんの! こ
れって、もしかして…こ、こ、恋?」
  花子、すぐに食券を買って、食堂に入っ
  ていく。
学生1「あーあ。本気にさせちゃって」
和樹「え? 何言ってんの?」
美月「お待たせー」
  花子と同じ服を着ている美月がトイレか
  ら出てくる。
和樹「俺には美月がいるじゃん」
美月「ん? どうかした?」
和樹「ううん。よしっ! じゃあ、いこっか」
  和樹、美月の肩を抱き、三人は学食を出
  ていく。
  食堂にいる花子は幸せそうな表情。

                完

2016/05/13

映像表現・理論コースINDEX

年月別アーカイブ

Page Top